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ISO22000とは?HACCPとの関係やメリットデメリットをわかりやすく解説
2022.03.26
「ISO22000とは何?」「ISO22000のメリットデメリットは?」「ISO22000とHACCPの違いは?」
食品衛生における取り組みとしてHACCPが義務化され、食品安全への意識が高まるにつれ、ISO22000も注目されつつあります。食品に関わる事業を行なっている方は、一度は聞いたことがあるのではないかと思います。
しかし、実際にどのようなシステムなのか、知らない方も多いのではないでしょうか?
ISO22000はHACCPを基礎としてISO9001も取り入れたマネジメントシステムです。
この記事では、HACCPや民間認証のサポートを行う東邦電気工事株式会社が、ISO22000とは何かを分かりやすく解説。この記事を読むと、ISO22000について一通り網羅することができます。
- ISO22000とは?
- ISO22000のメリットデメリット
- ISO22000とHACCPの関係
- ISO22000とISO9001の違い
- ISO22000の規格要求事項
- ISO22000におけるハザード分析表
- ISO22000におけるインシデントとは?
- ISO22000とフードディフェンスの関係
- ISO22000の手順書例
- ISO22000の内部監査とチェックリスト
それでは、ISO22000とは何かについて見ていきましょう。
ISO22000とは?読み方や認証範囲を簡単に解説
ここでは、ISO22000とは何か?読み方と認証範囲について解説します。
ISO22000とは?
ISO22000(アイエスオーニマンニセン)とは、食品衛生管理システムである「HACCP」を基礎に、品質管理システム「ISO9001」を取り入れた国際規格の食品安全マネジメントシステムです。
安全な食品を消費者に届けることを目的とし、HACCPの7原則12手順をベースに、ISO9001のPDCAサイクルを取り入れることで、食品安全に対する継続的な改善を行います。そのため、より広い視点から継続して改善を行うため、常に安全な食品を消費者のもとに届けることができます。
ISO22000の認証範囲
ISO22000は、食品を生産する段階から消費者に届くまでを対象とし、食品やその材料の生産から加工、物流、保管、販売まで、直接的・間接的に関わらず、食品を扱う全ての工程(業種)が認証範囲となっています。
カテゴリ | サブカテゴリ | ||
A | 畜産・水産業(動物生産) | AⅠ AⅡ |
肉/乳/卵/蜂蜜のための畜産 魚及び海産物の生産 |
B | 農業(植物生産) | BⅠ BⅡ |
農業(穀類/豆類は除く) 穀類及び豆類の農業 |
C | 食品製造 | CⅠ CⅡ CⅢ CⅣ |
腐敗しやすい動物性製品の加工 腐敗しやすい植物性製品の加工 腐敗しやすい動物性製品及び植物性製品んの加工(混合製品) 常温保存製品の加工 |
D | 動物の飼料製造 | DⅠ DⅡ |
飼料の製造 ペットフードの製造 |
E | ケータリング | E | ケータリング |
F | 流通 | FⅠ FⅡ |
小売り/卸売り 食品の仲買/取引 |
G | 輸入及び保管サービスの提供 | GⅠ GⅡ |
腐敗しやすい食品及び飼料の輸送及び保管サービス 常温保存食品及び飼料の輸送及び保管サービスの提供 |
H | サービス | H | サービス |
I | 食品包装、及び包装資材の製造 | I | 食品包装、及び包装資材の製造 |
J | 装置の製造 | J | 装置の製造 |
K | (生化学)化学製品の製造 | K | (生化学)科学製品の製造 |
ISO22000のメリットデメリット
HACCPよりもより安全な食品を継続して製造・提供するためのISO22000。HACCPと違い取得が義務化されていないISO22000を取得するメリットはあるのでしょうか?ここでは、ISO22000を取得するメリットデメリットを紹介します。
ISO22000のメリット
食品事故へのリスク軽減
ISO22000を取得することの一番のメリットは、食品事故を減らすことができるという点です。
ISO22000のシステムを構築し、継続して運用することで、会社全体の食品安全への意識が高まり、食品事故となるようなハザードに気付きやすくなるため、食品事故を未然に防ぎます。
作業効率の改善
ISO22000やHACCPを導入する場合、食品製造の各工程において危害分析を行います。その際、製造工程を全て書き出すことで、今まで気づかなかったような無駄な工程が見つかる事も少なくありません。
危害分析で、リスクが少なくより安全な製造工程を目指すことで、製造工程が整備され、作業効率を改善することができます。
消費者・取引先との信頼アップと取引の優位性
ISO22000を取得することで、取引先や消費者に対して、自社の食品の安全性の高さをアピールすることができます。
取引時の優位性が高まるのはもちろん、取引先や消費者との信頼度も高めることができます。
ISO 22000のデメリット
工数がかかる
ISO22000システムの構築には、多くの工数が発生します。
食品安全チームの編成、適用範囲の設定、導入計画の作成、危害分析、HACCP計画書の作成、手順書の作成、システム運用と検証、審査機関による審査など、ISO22000を取得する前の段階でも、やるべき作業が多くあります。
また、ISO22000取得後でも、毎日の記録や改善が必要になるため、作業工数が非常に多くかかるというのはデメリットとして挙げられます。
費用がかかる場合がある
ISO22000取得には、費用が発生する場合があります。
導入前現在の設備が、ISO22000やHACCP導入に必要な要件を満たしていない場合、設備を買い替えたり追加購入が必要です。
設備を購入するとなると、数万〜数十万、高いものでは数百万の機械も少なくないため、ISO22000の取得時に多くの費用が発生してしまうこともあるのです。
ISO22000とHACCPの関係は?それぞれの特徴を比較
HACCPは、食品を製造する各工程における危害要因を把握することで食品事故を未然に防ぎ、食品の安全性を保つための食品衛生管理システムです。
一方ISO22000は、製造過程にとどまらず、フードチェーン、つまりは農家から消費者に届くまでに関わる全ての事業が認証範囲の食品安全マネジメントシステムです。
ISO22000の中に、HACCPの7原則12手順が含まれ、さらには、品質管理システムのISO9001を導入することでHACCPよりもより高いレベルで食品の安全性を高めることができます。
そのため、ISO22000を取得するためには、まずはHACCPの導入が必要不可欠です。
東邦電気工事株式会社では、ハサップ導入のサポートを行っております。経験豊富なHACCPの専門スタッフがHACCP導入から食品衛生に関わるさまざまな問題解決をサポート。HACCP導入をトータルでサポートします。HACCP導入がまだの方はぜひお問合せください
【対比表】ISO22000とISO9001の違い
食品に関わるISO規格に、ISO9001というマネジメントシステムがあります。
ISO9001とは、品質管理システムで、食品に限らず、さまざまな分野における品質管理に適用できます。ISO規格の中で最も普及しているシステムであり、品質管理によって一貫した製品・サービスを提供することで、顧客満足を向上させることを目的としたマネジメントシステムです。
一方、ISO22000は、前述した通り、HACCPを基礎にISO9001を取り入れ、安全な食品を消費者に届けることを目的とした食品安全マネジメントシステムです。
ISO22000は、ISO9001の要求事項を一部取り入れることで、より安全な食品を製造・流通させることができます。
以下、ISO22000とISO9001の目的や特徴を簡単にまとめた対比表です。
ISO22000 | ISO9001 | |
対象 | フードチェーンに関わる全ての業種 | 業種・業態を問わずさまざまな分野に適用 |
特徴 | HACCPの要素を全て含み、ISO9001のマネジメントシステムを加えた国際規格。 | あらゆる組織が認証取得している最も普及しているマネジメントシステム。 |
目的 | 消費者に安全な食品を提供できるマネジメントシステムの構築 | 一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足の向上を図る |
認証取得の効果 | ・食品事故のリスク軽減 ・作業効率化 ・取引の優位性と信頼性の向上 |
・作業効率化 ・リスク管理による食品事故防止 ・取引の優位性と信頼性の向上 |
ISO22000の規格要求事項について
ISO22000は、「ISO22000規格要求事項」に添ってシステムを構築します。
ISO22000規格要求事項は、全10章から構成されており、内4〜10章がシステム構築に関わる要求事項です。2018年には、ISO22000規格要求事項が改正され、用語の定義の見直しやマネジメントシステムの強化が施されました。
ここでは、2018年度版ISO22000規格要求事項の内容を重要なポイントに絞って紹介します。
PLAN(計画:第4~7章)
組織の整備(第4章)
自社がおかれている状況を把握し、「食品安全」に対して影響を及ぼすような問題や課題点を洗い出します。
状況把握には、
- 食品偽装、食品防御、意図的な汚染防止
- 競争、市場
- 会社の業績、会社が持つ情報や技術
- 国際的な動き、地域の動き
など、直接食品安全に関わる事ではなくても、「自社のビジネスチャンスはいつなのか」「どんな状況になると不利なのか」「自社に関わる取引先や人とどんな約束をしていて、どんな期待をされているのか」「国の情勢はどうなのか」など、広い視点から状況把握を行うことで、「食品安全」に関わるさまざまな問題を明確にします。
状況把握を行い、問題点を明確にした上で、「ISO22000を社内のどの範囲で構築するか」を決めます。
リーダーシップの発揮(第5章)
ISO22000の構築は、経営者が組織のトップとして責任をもって推進する必要があります。
経営者は、ISO22000を会社経営の一部として考え、経営戦略の1つとして認識し、ISO22000のシステム構築を行います。
また、社員にはそれぞれに食品安全へのルールを守ることへの重要性を理解させ、役割を与えることも重要な責務です。経営者だけでなく、社員や管理職が自らリーダーシップを発揮し、役割を果たすよう経営者は指揮を取ります。
計画作成(第6章)
計画を作成する際、食品安全に関わる会社の問題や課題の解決に取り組む上で起こりうる「リスク」をまず書き出し、そのリスクを「リスク」ではなく「機会」と捉えます。
そして予期せぬ事態が発生した際に、その機会を活かすには、自社はどうリスクを対処するべきなのか、計画を立てます。
- 食品安全の目標設定(進捗や結果が数手でわかる目標)
- 実施する内容
- 必要なスタッフや責任者、設備、ソフトウェア
- 目標達成期日
- 目標達成に対する評価方法
支援体制を整える(第7章)
計画実施に必要となる支援体制を整えます。
目標達成のために必要な設備や備品、スタッフのそれぞれの力量、経験、訓練研修体制、コミュニケーション方法など、必要な情報を社内で共有し、問題が発生した際にどう対処・支援するのかを文書化して外部(原料などの購買先・顧客・消費者など)に対しても共有します。
DO(実行:第8章)
運用計画の手順書の作成(第8章)
食品安全を保つためにも、常時多くの人の手が加わる食品製造工程において、明確なルールを設定し、運用させます。
管理基準、記録方法、衛生的な環境を保つためのルール、設備の配置や供給設備の管理方法、事故やトラブル時の対応など、詳細にルールを設定するために、以下の3つの項目について決定・整備を行います。
食品安全の基礎要件(要求事項)
衛生的な環境作りのベースとなる「PRP(前提条件プログラム)」「トレーサビリティ」「緊急時の対応」の3つの食品安全の基礎要件について整備し取り組みます。
ハザード分析表の作成
HACCP12手順をもとに、ハザード分析表を作成します。
ハザード分析とは、食品の製造工程に潜在的に潜むハザードについて、ハザードの起こりやすさや健康にもたらす被害の大きさによって、その管理方法を定めることを意味します。
ハザードの分析結果から、どの工程がどれだけの管理体制が必要か定めるために、大きく3つにランク分けします。
- 重点的に管理が必要な工程→HACCPによる管理
- 日常的に注意すべき工程→OPRPによる管理
- 基本的な衛生管理が必要な工程→PRPによる管理
検証プランの実施
運用計画の開始前の妥当性の確認後、実際に立てたプランを実施して、ハザードが確実に分析、対処できているかを検証します。
具体的に以下の5つのポイントについて検証します。
- PRPが実施されているか
- ハザード分析が継続的に更新されているか
- PRP、HACCPプランが実施され、効果を発揮しているか
- 自社で定めたルールが守られ、手順通り実施されているか
- ハザードレベルが許容範囲内であるか
CHECK(評価:第9章)
評価する
食品やサービスを提供する過程や製造工程において欠陥がなかったか、明確な指標や分析方法、評価方法を決めて評価します。
社員は、検証結果や日々のISO22000システムの運用結果を経営者に報告します。経営者は、システム運用開始してからの社内環境の変化や、商品・サービス品質、課題の進捗状況などの状況を把握し、より良い方向へ改善されるよう、適宜計画の見直しを行います。
ACT(改善:第10章)
問題の処理と改善
ISO22000の運用計画は日々改善していくことが必要です。
何か問題が発生した場合、まずは事態を解決し、その後、原因調査で原因を突き止めます。
そして、事故の原因となった部分への対策を日々の仕事の仕組みとして新たに運用システムを変更し、再発防止に努めます。
ISO22000におけるインシデントとは?
インシデントとは、食品事故になりうる危険がある状態のことをいいます。
インシデントは、事故になる前の状態であり、インシデントが発覚した際には、直ちに原因究明を行い、事故防止の対策をとります。
いくらバザード分析を行なったとはいっても、完璧にハザードを予測することは難しく、どうしてもインシデントは発生してしまうものです。
インシデントが発覚した場合、いかに早く原因を見つけ出し、対策を考えて運用に落とし込めるかが重要なポイントになります。
ISO22000とフードディフェンスの違い
ISO22000が、食品の製造に関わる全ての業種(農家から消費者に届くまで)の各製造工程における危害要因を管理、対策することで食品安全を維持するのに対し、フードディフェンス(食品防御)は、意図的に危害が加えられる可能性がないとは言い切れないことから、食品の製造環境を守ることで食品の安全を担保する考え方のことをいいます。
フードディフェンスは、ISO22000システムの上で成り立っており、ISO22000よりもさらに食品の安全が担保されているマネジメントシステムといえます。
ISO22000で必要な内部監査チェックリスト
ISO22000をシステムとして運用を開始し始めたら、内部監査を設けます。
ここでは、ISO22000システムの内部監査の目的やチェックリストについて解説します。
内部監査の目的とチェックリスト
ISO22000における内部監査の目的は、ISO22000システムの適合性と有効性の確認です。
内部監査では、簡単に以下6つのチェックポイントを確認します。
- 食品を安全に提供するための手順が正しいか
- 各工程において食品事故のリスクはないか
- 国内外問わず、取引先から提示されている取引要件に不備はないか
- 想定される食品事故のリスクや業務効率への継続的な改善がなされており、企業価値が向上しているか
- 社員への適切な教育を行い、法令遵守する様に推進されているか
- 業務を見える化し、円滑に進められているか
チェックリストを作成する際は、上記の項目を5W1Hに分けるなど、より細かく細分化します。
内部監査の業務手順
内部監査では、ISO22000の要件事項や、自社で定めた組織のマニュアルが正しく運用されているかを確認し、内部監査実施計画書を作成します。
内部監査実施計画書を作成後、実際に内部監査を行います。
内部監査は、チェックリストを用いて行います。
自社で定めた食品安全目標や、ISO22000システムの目的を意識して、業務の流れや役割分担など、各チェックリストの項目を確認しましょう。
監査後は、監査内容を内部監査報告書にまとめ、適切だった部分・不適切な部分共に報告します。不適切であった項目については、責任者に改善指示書を提出し、責任者は指摘を受けた箇所について改善を行います。
SUMMARYまとめ
ISO22000は、2021年6月から義務化されたHACCPも取り入れた、食品安全を届けるための重要なマネジメントシステムです。
ISO22000を取得することのメリットはいくつかありますが、やはり一番は、食品の安全です。ISO22000認証が取得できれば、消費者に対して食品の安全を担保できるというアピールにも繋がるため、消費者からの信頼を獲得することができます。
食品製造に関わる企業の方は、ぜひ一度、ISO22000取得を検討してみてはいかがでしょうか?
東邦電気工事株式会社では、HACCPはもちろんISO22000などの民間認証サポートを行っています。ハード面ソフト面の両面をよく知る東邦電気工事株式会社だからこそ、負担の少ない食品安全マネジメントシステムを作成することができます。
食品に関わる業種の経営者の方やISO22000取得を検討している方はぜひ、こちらまでお問い合わせください。


受変電設備・キュービクルの更新・メンテナンスから食品工場の衛生管理・HACCP対応、保守管理、高圧電気工事、空調設備工事、災害対策設備(BCP)は名古屋市・一宮市の東邦電気工事株式会社にお任せください。昭和11年に創業、昭和31年に東邦電気工事株式会社として法人化。それ以降、総合電気工事メーカーとしてたくさんの工場のお客様から直接受注を頂いてきました。現在は繊維工場や自動車関連工場だけでなく、食品工場や公官庁の電気工事・メンテナンスにも携わっており、お客様の「安心と感動」を提供するために日々邁進しております。